どんなに機能性の高い杖でも、使い方を間違えれば安全に歩くことができず、かえって危険なことにも。正しい杖の使い方をご紹介します。
弱っている足の反対側の手で持つ
杖の握り方やつき方を間違えている人は意外と多いものです。最もスタンダードなT字杖で、正しく使うためのポイントを紹介しましょう。
●長さの調節のしかた
背筋を伸ばした状態で立ち、腕を自然に体の前方向に下ろし、ひじを30〜40度に曲げた状態が、T字杖を持つときの基本姿勢です。
なぜ、30〜40度かというと、ひじを伸ばす筋肉が最も力を出しやすい角度だからです。杖を地面にしっかりと押し付けることができます。
そして、杖を持つ側の足から前方に20cm、そこから外側に20cm移動した位置が杖先をつく目安です。この状態で、グリップ(握り手部分)をつかんで、杖の先端が地面につく長さがその人にとってベストな杖の長さの目安になります。
ただし、片麻痺のある人などは、体の前でなく、横や後ろに杖をついた方が力を入れやすいことも多くあります。
自分が、歩行中のどの位置で最も力を入れるかをよく確認し、その位置でひじの屈曲が30〜40度になる長さに杖を調節するとよいでしょう。
●グリップの正しい握り方
T字杖の場合、グリップの長いほうを手前にして握ります。
また、人指し指だけをグリップの短い方にかけ、人差し指と中指の間でシャフト(支柱)を挟むように持つと安定します。
挟んで握るのが難しい場合は、人差し指をシャフトに沿わせて固定させてもかまいません。
グリップの長いほうをすべての指で握ると、シャフトに対して、垂直に力がかからず不安定になります。杖先をついたときに、滑ったり、シャフトが曲がったり折れたりする可能性があるので注意しましょう。
●杖を使うのはどっちの手?
杖を持つ側の手を誤解している人もいます。
左右どちらかの足が弱っている場合、T字杖は、弱い足とは反対側の手に持ってください。利き手が右手の人でも、右足が弱い場合は左手で持ちます。杖は弱いほうの足をかばうために使うので、利き手はあまり関係ありません。
とくにどちらかの足が弱っているわけでなく、疲れたときに体を支えるために杖を使用する場合は、持ちやすいほうの手でOKです。試しに左右片方ずつ歩いてみて、歩きやすい側で持ちましょう。
杖を正しく使うことで、歩行も格段とラクになります。車で移動する機会も減っていくため、ガソリンの使用も削減されエコにつながります。
正しい杖の使い方をいまから習慣づけていきましょう。
監修
西野英行先生
理学療法士
制作協力
からだにいいこと
創刊20周年を迎えた健康生活情報誌『からだにいいこと』。医師や専門家の監修のもと、「いますぐできる」「心も体も元気になれる」健康・美容・ダイエット情報を発信中。
【出典・参考文献】
『100歳まで元気でいるための歩き方&杖の使い方』(翔泳社)