杖を使って歩くときに大切なのが、杖や足をつくタイミングです。正しいタイミングを把握して上手に歩けるコツを紹介しましょう。
歩行中や階段で杖をつくタイミング
杖を使った歩き方は、大きく分けて「2動作歩行」と「3動作歩行」の2種類があります。
●2動作歩行
最もスタンダードで通常歩行に近い、杖を使った歩き方が2動作歩行です。杖と反対側の足(弱っているほうの足)を同時に前に出して、「1、2、1、2……」と歩くスタイルです。
1)杖と弱い足(杖と反対側の足)を同時に出す。
2)強い足(杖側)を出す
この歩行のポイントは、股関節を伸ばせることです。後ろに伸ばした足で、地面を蹴ることで、長距離を早く効率よく歩けます。
●3動作歩行
足の振り出し動作が難しく、2動作歩行がつらい方に適しているのが3動作歩行です。3動作歩行は、先に杖を体の前に出して、それに揃えるように両足を出す歩行様式です。
1)杖を前に出す
2)弱っている足(杖と反対側の足)を出す
3)強い足(杖側)を出す
以上の順で、3つの動作を繰り返して歩きます。
3動作歩行は、足が振り出しやすくて安定しますが、通常の歩き方とは異なり、歩幅が狭くなるため、流れるような歩行とはいきません。そのため歩行効率が悪く、長距離を歩くと疲れやすいという面があります。
次に、杖をつきながら階段を昇り降りする場合です。階段では、昇り降りに関係なく、常に最初に杖を出します。
●階段を昇るとき
1)杖を前に出す
2)強い足(杖側)を出す
3)弱っている足(杖と反対側の足)を出す
●階段を降りるとき
1)杖を前に出す
2)弱っている足(杖と反対側の足)を出す
3)強い足(杖側)を出す
階段では手すりも利用できます。杖を持つ手の側に手すりがあれば、杖を反対側の手に持つなどして、手すりをつかみながら昇り降りしたほうが安定するでしょう。
もし片麻痺などで、反対側の手で杖を待つのが難しい場合は、杖のストラップを手すり側の手にかけて、手すりを使います。
一方、杖を持つ手と反対側に手すりがある場合は、手すりよりも杖を使って昇降した方が楽な場合が多いです。ただし、急な階段で降りるのに恐怖感が強い場合は、手すりをつかんで降りましょう。
歩くことがラクになれば、自分の足でこれまでより遠くに移動できるようになります。車に頼りすぎることがなくなり、CO2など有害物質の排出も削減され環境保護にも役立ちます。
杖を使って上手に歩くコツをマスターしていきましょう。
監修
西野英行先生
理学療法士
制作協力
からだにいいこと
創刊20周年を迎えた健康生活情報誌『からだにいいこと』。医師や専門家の監修のもと、「いますぐできる」「心も体も元気になれる」健康・美容・ダイエット情報を発信中。
【出典・参考文献】
『100歳まで元気でいるための歩き方&杖の使い方』(翔泳社)