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ウォーキングはどれくらい長く、どれくらいたくさん歩けば効果的なのでしょうか。距離や歩数の目安について、黒田先生に教えてもらいました。
ウォーキングは距離より歩数を目安に。病気予防に効果的な歩数とは
楽天シニア:
ウォーキングには、どのくらいの距離を歩くといいのですか?
黒田先生:
距離ではなく、歩数を目安にする方がいいでしょう。東京都健康長寿医療センター研究所の青柳幸利先生が、歩行と病気予防という観点から、5,000人の65歳以上を10年以上観察した研究でも、1日8,000歩、そのうちの20分間は速歩きなどをするのが、病気を予防するためには効果があると発表されています。しかも、1万歩以上歩くことで免疫力が下がったという報告もありますから、歩き過ぎはよくありません。※
楽天シニア:
毎日8,000歩歩くのも大変ですね。
黒田先生:
そうですね。だから、家の中で動く歩数やスーパーへ行った歩数なども加えて、朝起きてから寝床に入るまでの歩数が8,000歩で構いません。
そのうち、20分間“速歩”するということがポイントです。そして、できるだけ正しい姿勢を保つことが大切。
※(出典)青柳幸利『健康長寿を実現する至適身体活動パターンの解明:加速度計を用いた10年間の縦断研究』
「1日8,000歩」「20分速歩」ができるようになるコツは正しいウォーキング姿勢
楽天シニア:
1日8,000歩歩いたり、20分速歩きができたりするには、どういうことに気を付ければいいですか。
黒田先生:
前回もご紹介した正しいウォーキングの姿勢を普段から心がけていると、歩き過ぎによる腰痛やひざ痛、肩こりなどを予防することにもなります。
よく長く歩くと足裏が痛くなったり、腰痛が起こったりするという方がいますが、それは正しいフォームで歩けていないことが大きな原因です。ご自分のフォームを確認してみてください。
楽天シニア:
長く歩いても疲れないために、他に注意することはありますか?
黒田先生:
一直線を挟むように、つま先は正面に向けてかかとから着地します。普段歩きよりも3センチ前に足を出すような意識で歩幅を広げます。後ろの足は最後に親指が地面から離れます。これで“ローリング歩行”になります。
ローリング歩行の足元を見てみましょう。
ローリング歩行を意識したウォーキングも動画でご紹介しています。
長めのウォーキング前にはストレッチからスタート
楽天シニア:
歩く前に準備運動をしたほうがいいのでしょうか?
黒田先生:
そうですね。少し長めに歩くつもりの時には、出かける前にストレッチをやるとケガなどを予防することができますし、歩幅を広げやすく、速く歩くことを助けてくれます。
楽天シニア:
おすすめのストレッチはありますか?
黒田先生:
「ギュー」「パッ」は、肩甲骨周りがほぐれ、歩いているときの腕振りが楽になりますから、ウォーキングの前に取り入れてください。
<「ギュー」「パッ」>
「ギュー」
ひじを曲げて、肩甲骨を寄せて5秒キープ。
「パッ」
力を抜いて背中を丸めるようして10秒キープ。「ギュー」から「パッ」を2セット繰り返す。
動画でもご紹介しています。
黒田先生:
「ふくらはぎのストレッチ」は、正しいフォームで速歩きするためにはやっておきたいですね。また、足がつりやすい、腰痛やひざ痛がある、歩幅が狭い、足裏が疲れやすいという人におすすめです。
<ふくらはぎのストレッチ>
両足のつま先は正面を向けて立つ。左脚を後ろに引いて、右ひざを曲げて左のふくらはぎを伸ばし20秒キープする。両足ともかかとをつけておく。これを左右2回ずつ行う。椅子につかまって行ってもいい。
黒田先生:
「太ももの裏伸ばし」は、太ももの裏側の筋や筋肉を伸ばしながら、背中周辺もストレッチできます。腰痛やひざ痛のある人や、足裏の疲れが感じやすい人におすすめですし、肩こり、猫背の改善にもいいんです。
長くたくさん歩ける体をつくる「プラス筋トレ」
楽天シニア:
長い距離を歩いても疲れない、健康な体をつくるためにはどうすればよいですか?転倒やつまずきも気になります。
黒田先生:
体力づくりのためには、有酸素運動・筋肉トレーニング・ストレッチの3つをセットで行うことが大事です。ウォーキングで有酸素運動をし、筋トレとストレッチで運動機能を上げるための骨格をつくるのです。それらのバランスがすごく大切で、食事でいうと、有酸素運動はごはん、筋トレは肉や魚、ストレッチは野菜です。食事はバランスよく摂りましょうと言いますが、運動の仕方は偏っている方が多いですね。
楽天シニア:
どんな筋トレを取り入れるといいのでしょうか?
黒田先生:
筋トレはウォーキングの前にストレッチと一緒に行ってもいいですし、歩いている最中とか、歩き終わった後とかでも大丈夫です。
例えば「脚上げ」は、お腹から脚を出す筋肉、バランスを取る筋肉を強くします。歩くときにお腹から脚が出るようになれば、つまずくことがなく、歩幅を広げた正しい歩き方ができるようになります。
<脚上げ>
片脚を上げ、そっと下ろす。これを左右10回ずつ行う。壁などにつかまりながら行ってもいい。
動画でもご紹介しています。
黒田先生:
また、スクワットは椅子がなくてもできますね。スクワットで、太もも、お尻、背筋、腸腰筋というインナーマッスル、大殿筋、ふくらはぎ、腹筋群などを強くすることができます。
<スクワット>
手のひらを上に向けて両腕を肩の高さに上げて立つ。
顔を前に向けたまま、つま先より前にひざが出ないように、お尻を突き出すようにひざを曲げていく。
椅子を後ろに置いて、ひざを曲げながら椅子に座ってもいい。
動画でもご紹介しています。
雨の日のウォーキングは、室内で “その場足踏み”
楽天シニア:
ウォーキングを毎日続けたいと思っても、雨が降ったりして出かけられない時もありますが、そんな時の速歩はどうすればいいですか?
黒田先生:
ウォーキングを毎日のノルマにしないことも大事です。毎日のノルマにするから雨の日も歩いちゃう。滑ったり交通事故にあいやすくなるなど、雨の日のウォーキングは危ないですよね。
そこで、天気の悪い日などの外歩きができない日は、“その場足踏み”をおすすめしています。
普通に歩くのと、脚を上げて筋トレ風にするのとを組み合わせて、テレビを見ながら、または音楽を聞きながら、20分間足踏みをするだけです。これで雨の日でも継続することができます。
<その場足踏み>
その場で腕を振り、つま先が最後に離れるように足首を柔らかく使いながら足踏みする
時折、太ももをあげて負荷をかける。
楽天シニア:
室内で足踏みの時も、ストレッチや筋トレをした方がいいですか?
黒田先生:
そうですね。雨の日は、筋トレとストレッチをして、体をつくってメンテナンスをする日にしているという方もいますよ。
ウォーキングは毎日の習慣化がおすすめ!
・ウォーキングでは距離より歩数を目安に
・1日8,000歩、そのうち20分は速歩きを目標に
・正しいフォームで歩くことが長く速く歩くためにも大切
・ローリング歩行を意識しよう
・長めに歩く前にはストレッチを
・長くたくさん歩ける健康な体づくりに筋トレもおすすめ
・雨の日は室内で“その場足踏み”やストレッチ、筋トレを
監修
黒田恵美子先生
健康運動指導士
健康経営エキスパートアドバイザー。生活習慣病、介護、ロコモの予防改善を中心に、運動弱者を支援する講演や運動指導を行っている。人生の最後まで、自分の足で歩くことを目的とした「ケア・ウォーキング®」「ひざちゃん体操」などを考案し、簡単で痛みの起こらない体の使い方、修正法、動作改善を提案している。
制作協力
からだにいいこと
創刊17周年を迎えた健康生活情報誌『からだにいいこと』。医師や専門家の監修のもと、「いますぐできる」「心も体も元気になれる」健康・美容・ダイエット情報を発信中。