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健康寿命を延ばすためにも継続したいウォーキング。歩く時間帯によってウォーキングの効果は変わるのか、健康運動指導士の黒田恵美子先生に教えてもらいました。
朝でも夜でも好きな時に。ウォーキングは継続が一番
楽天シニア:
ウォーキングをするには、朝、昼、夜、どの時間帯が適切ですか?歩く時間帯による健康へのメリットはありますか?
黒田先生:
歩く時間帯によるメリットは、朝も昼も夜もあります。
でも、朝は早く目が覚めるので歩きやすいとか、朝や夜より昼の方が時間をとりやすいとか、夜の方がお友だちと時間を合わせて一緒に歩けるとか、それぞれのライフスタイルによって好きな時に歩けばいいと思います。
この時間じゃなければ……と、あまりこだわってしまうと、継続するのが難しくなります。
こちらの連載の第2回でも、「1日8,000歩を目標に」とお伝えしましたが、その8,000歩の中で、例えば買い物などで2,000歩歩き、ウォーキングとして残り6,000歩を歩くとか、こまめに何回か外出して、できるだけ8,000歩に近づけるとか、そんな歩き方でもいいです。
ただし、人には生体リズムがあります。歩く時間帯によって生体リズムによるメリットもあるので、それを覚えておけば、どの時間帯でも歩いていることが楽しくなると思います。
朝のウォーキングで「幸せホルモン」を分泌
楽天シニア:
では、まず朝歩くと得られるメリットを教えてください。
黒田先生:
夏などは、日中歩くのは暑くて大変です。ですから、暑い時期は朝が気持ちいいですね。
また、朝、陽を浴びながら歩くことでセロトニンが分泌されることがわかっています。セロトニンは「幸せホルモン」とも呼ばれていて、これがたくさん分泌されると心が穏やかになるのです。
さらに、セロトニンは体内時計をリセットし、夜にはメラトニンというホルモンに変化していきます。メラトニンは「快眠ホルモン」とも呼ばれるもので、これがたくさん分泌されれば夜寝付けないといった悩みも改善できるはずです。
ですから、昼間や夜が歩きやすいという方も、できれば20分ぐらいでもいいので、朝歩くことで1日を穏やかに過ごせて、ぐっすり眠れるようになるでしょう。
楽天シニア:
朝歩くのは、生体リズム的に適しているということですね。
黒田先生:
そうですね。
ただし、朝歩く時には、必ず水分を摂ってから始めてください。特に、血圧が高い方や血液が固まりやすい方など、生活習慣病の心配がある方は、朝早くから動き出すことは気をつけた方がいいですね。
食後の速歩で血糖値を下げる
楽天シニア:
昼歩くことのメリットはありますか?
黒田先生:
日中は、取り立ててウォーキングをしようと思わなくても、動き回ったり、あちこち見て歩いたりすることで、自然にウォーキングに組み入れることができますね。
ウォーキングウエアに着替えてとか、8,000歩を毎日歩かなければなどと頑張ってしまうと疲れやすくなって、三日坊主になりやすいので、あまり頑張らずにゆったりとした速度で歩いても大丈夫です。
糖尿病の方や血糖値の高い方は、特に食後のウォーキングがおすすめです。食事をして約30〜40分後に血糖値上昇のピークが来るので、そこで歩いておくとインシュリンを使わずに血糖値を下げることができます。
インシュリンを使いすぎてその働きが鈍ると糖尿病になりやすくなるので、既往症がない方でも、食後のウォーキングは肥満の予防としてもおすすめです。
速く歩くことで交感神経を優位にすることができますので、ウォーキングをすることで午後の仕事などに対してもやる気が起きることでしょう。
夜のウォーキングを理由に夕食時間を早める
楽天シニア:
夜にウォーキングをすることのメリットはありますか?
黒田先生:
夜のウォーキングも、夕食後に歩くと血糖値を下げ、夕食で摂取した糖質が脂肪になるのを防いでくれます。ですから肥満の予防に有効です。
また、夕食を食べてから歩こうと思っていると、おのずと夕食の時間が早くなりますよね。あまり遅い時間帯の夕食は、内臓に負担をかけますので、ウォーキングをするからと夕食を早めに済ますのはおすすめです。
夜のウォーキングでは呼吸法で副交感神経を優位に
楽天シニア:
夜のウォーキングの注意点はありますか?
黒田先生:
夜のウォーキングは、速歩は避けて、ゆっくり歩くことをおすすめします。これから眠ろうとする時間帯ですので、速歩で交感神経を優位にせず、副交感神経に切り替えるように呼吸を意識しながら歩くといいでしょう。
呼吸は、特に吐く息を意識します。息を吐くときには副交感神経を刺激し、血管が開いて血流が良くなるためです。
最初は歩きながら、4秒かけて息を吸って、6秒かけて吐きます。これができるようになったら、6秒で吸って8秒で吐く……。このように、吐く息を長〜くしながら歩くといいですね。
ウォーキングが終わったらゆったりと入浴し、寝る前1時間はのんびり過ごしながらさらに副交感神経を優位にし、眠りにつくようにしましょう。
ウォーキングは毎日の習慣化がおすすめ!
ウォーキングにおすすめの時間帯
・朝・昼・夜それぞれにメリットがある
・朝は「幸せホルモン」が分泌され、夜の安眠につながる
・昼は、食後の速歩でダイエットが期待できる
・夜は、呼吸を意識して歩くことで、快眠を得ることができる
・暑い夏は、朝や夜に歩くことがおすすめ
・寒い冬は、日中や夕方歩くことがおすすめ
監修
黒田恵美子先生
健康運動指導士
健康経営エキスパートアドバイザー。生活習慣病、介護、ロコモの予防改善を中心に、運動弱者を支援する講演や運動指導を行っている。人生の最後まで、自分の足で歩くことを目的とした「ケア・ウォーキング®」「ひざちゃん体操」などを考案し、簡単で痛みの起こらない体の使い方、修正法、動作改善を提案している。
制作協力
からだにいいこと
創刊17周年を迎えた健康生活情報誌『からだにいいこと』。医師や専門家の監修のもと、「いますぐできる」「心も体も元気になれる」健康・美容・ダイエット情報を発信中。