家族のために今からできる、認知症への備えと予防

家族のために今からできる、認知症への備えと予防

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認知症はまだ自分とは関係がないと思っていませんか?誰でもかかる可能性がある一方、予防ができることもわかってきました。「家族に迷惑をかけない」という思いを少しでも軽くするためにも、認知症対策は早めに始めましょう。

認知症は誰でもかかる可能性がある病気

認知症とは、脳の認知機能が低下し、日常生活全般に支障が出る症状のことをいいます。75歳以降になると発症する人が急増し、2040年には65歳以上の4人に1人が認知症になると推計されています。※1

認知症の原因はさまざまですが、認知症で最も多いアルツハイマー型認知症は、老化による脳機能の低下にともなって、誰でも発症する可能性があることがわかっています。

脳の萎縮は20歳ごろからすでに始まっており、45歳を過ぎると物忘れが気になる、集中力が続かないなど、認知機能の低下を自覚することが増えてきます。

物忘れと認知症はイコールではありませんが、物忘れは認知機能の低下を知らせるサインであることは間違いありません。

単なる「物忘れ」と「認知症」の差は、「自分の行動を忘れるかどうか」にあります。たとえば、「昨日食べたものが思い出せない」のは普通の物忘れですが、「昨日食事したかどうか思い出せない」のは認知症の可能性が高いといえるのです。

「家族に迷惑をかけたくない」そのための備えとは

認知症はいまや「がんよりもかかりたくない病気」であるといわれています。その理由としては、「家族に迷惑をかけたくない」ということがトップに挙げられるようです。※2

認知症を発症し、重症化すると、例えば一人で外出できない、財布などの置き場が思い出せない、食事をしたことを忘れる、家族の顔を忘れる、徘徊(一人で歩きまわること)することもあるなど、身近にいる人に大きな負担がかかることが考えられます。もちろん病気の重症度や進行には個人差があり、すべての人がこのような重い症状を発症するわけではありませんが、認知症リスクは予測ができないため、最も重いケースを想定して不安になるのは当然のことといえます。

一方、家族に迷惑をかけないための備えは、認知症を発症していない時に行っておく必要があります。認知機能が低下すると正常な判断ができなくなるからです。最近では、元気なうちに施設の入居を予約したり、認知症に特化した保険に加入したりするなど、家族に金銭面の負担をかけないように準備する人も増えています。

予防が大切~45歳を過ぎたら習慣にしたいこと

認知症には残念ながら特効薬はまだ見つかっておらず、現時点では発症したら元通りに完治することはないといわれています。しかし、認知症の手前であるMCI(軽度認知障害)の段階で認知機能の低下に気づくことができれば、認知機能の低下を食い止め、元の状態に戻すことも可能であることがわかってきました。

また、認知症は「アミロイドβ」が脳に蓄積することが原因の一つと考えられていますが、このアミロイドβの蓄積を防ぐために有効な生活習慣もわかってきました。その生活習慣は、運動・食事・脳トレの3つ。これをセットで行うことが重要です。

1. 運動
1日30分、歩くようにしましょう。とぎれとぎれで合計30分でもOKです。いつも車を使っている人は、たまには歩いて買い物に行くなど、ちょっとした心がけで歩く時間をつくるとよいでしょう。

2. 食事
一汁三菜の和食を基本にし、週3日は魚を食べましょう。和食にすると自然に多く摂れる大豆製品には、脳にいいレシチンという成分が含まれます。また「糖分は脳の栄養」と言って甘いものを食べる人もいますが、糖分の摂りすぎはアミロイドβの蓄積を招きます。糖分は主食で摂り、間食での糖分は控えるようにしましょう。

3. 脳トレ
パズルやゲームなど、自分が楽しんで続けられるものを選びましょう。勉強と思っていやいや行うことはストレスになり、認知機能にもいい影響を与えません。昔のアルバムを見て懐かしんだり、思い出したりすることも脳の活性化につながります。「楽しい」と「懐かしい」という気持ちを満たす活動がおすすめです。

認知症予防にいい習慣は、生活習慣病全般を防ぐにも有効です。「まだ先のこと」と思わず、できることから始めましょう。

監修

  • 豊田早苗先生

    精神科医、とよだクリニック院長。総合診療に携わった後に2005年に、とよだクリニックを開業。2013年には、認知症の予防・リハビリを推進する場として「とよだクリニック認知症予防・リハビリセンター」を開設。

制作協力

  • からだにいいこと

    創刊17周年を迎えた健康生活情報誌『からだにいいこと』。医師や専門家の監修のもと、「いますぐできる」「心も体も元気になれる」健康・美容・ダイエット情報を発信中。

出典
※1 『日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究』(平成26年度厚生労働科学研究費補助金特別研究事業九州大学二宮教授)による速報値各年齢の認知症有病率が上昇する場合の将来推計人数 /( 率 )」をもとに作成
※2 日本認知症予防学会と食から認知機能について考える会が行った調査をもとに作成

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