爪の健康と歩行の関係

お出かけシーズン到来!転倒を予防して快適なウォーキングを

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ウォーキングをしている時に、つまずいたり転倒したりした経験はありませんか? もしかすると、爪の変形が影響しているのかもしれません。早めに治せば歩きやすくなり、お出かけシーズンをより楽しむことができます。

転倒しやすいのは爪のせい?

足は体の土台となる重要な部位です。しかし、加齢とともにさまざまな問題が生じてきます。まず、体が硬くなることで歩き方のバランスが崩れ、足元にかかる負荷が偏ってきます。また、足は細かい骨が連なって形成されており、中央でアーチを描くなど、構造がとても複雑です。この構造も加齢とともに劣化し、崩れてきます。すると、足の形が変化し、外反母趾や爪の変形などのトラブルが起こりやすくなり、転倒しやすくなってしまいます。

手の爪と足の爪は同じだと思われがちですが、その役割は異なります。手の爪は指先を保護し、物をつかみやすくする役割があります。細かい作業をする時に力の入れ方を微妙に調節できるのは爪のおかげです。一方、足の爪には、体を安定させ、歩く時に指先にかかる力を支える働きを担っています。爪がなければ地面を蹴ることができず、地面からの力も十分に受け止めることができません。

つまり、爪の健康と歩行には重要な関係があり、あなたが転倒しやすいのは爪のせいかもしれないのです。

爪の変形は爪水虫が原因?

爪の変形の代表的な疾患として挙げられるのが、巻き爪、陥入爪※(かんにゅうそう)、爪水虫などです。巻き爪や陥入爪は、深爪や自分に合わない靴、外反母趾が主な原因で引き起こされるのに対し、爪水虫は爪が「白癬菌(はくせんきん)」というカビの一種に感染することで起こります。

※陥入爪:爪の端が皮膚に食い込み、炎症をおこしている状態

<代表的な爪水虫の症状>

症例

足水虫は白癬菌が皮膚に寄生することで発症しますが、これを長年放置すると白癬菌が皮膚から爪の間に侵入し、爪水虫になります。

爪水虫は痛みやかゆみを感じにくいため、気づかずに症状を悪化させてしまうケースもあります。

爪水虫になると、爪の表面が白色〜黄色に変形して、縦線や横線、凸凹が目立つようになります。そのうち厚みが増して、爪の内部が空洞になることも。

放置していると、爪の下の角質がどんどん厚くなり、爪がもろくなってしまうこともあります。また、靴に当たって痛くなったり、歩きにくくなったりします。

日本で行われた水虫の罹患率を調査した研究※では、皮膚科を受診した日本人の7人に1人が足水虫、13人に1人が爪水虫、6人に1人が足に何らかの水虫を有しているという結果が出ました。また、爪水虫は高齢になるほど罹患率が高くなることも知られています。それくらい、意外と身近な病気なのです。

※畑康樹ほか:日臨皮会誌:41(1),066-076,2024(令和6)

爪水虫の治療は長期戦

爪水虫の治療には、抗真菌薬が使用されます。市販の足用塗り薬では効果が期待できないため、医療機関で爪水虫専用の塗り薬や飲み薬を処方してもらいましょう。薬の効果が現れると、爪の根元の部分からきれいな爪が少しずつ伸びてきます。爪水虫が完治するには感染部分が新しい爪に生え変わる必要があり、通常、1年から1年半ほどが目安です。

治療イメージ

軽症なうちから治療を開始することで、早期の改善が見込めます。「爪水虫かも…」と思ったら、早めに医療機関を受診しましょう。

この時期から治療を始めることで、来年の夏には素足を気にせず、サンダルを履くことができるかもしれません。

転倒防止には靴選びも大切

転倒しやすくなる原因の1つに、自分の足に合わない靴を履いていることも挙げられます。合わない靴で痛みや違和感があると、スムーズに歩くことができず、転倒しやすくなるのです。また、先に触れた巻き爪や陥入爪の原因にもなります。

自分の足に合った靴を探すために、まず自分の足の特徴を知ることから始めましょう。

靴の寸法は「〇cm」と表示される足長(かかとから一番長い指先までの長さ)と、「A~G」と表示される足囲(親指と小指の付け根にある骨の出っ張りを囲った足の横幅)で決まります。

同じ寸法でも、足の骨格やアーチの高さ、つま先の形などが、人それぞれ違います。そのため、靴を選ぶ時は必ず両足に履いて、以下の「靴のチェックポイント」を確認しましょう。立ったままでは各部のあたり具合などがわからないので、実際に歩いてチェックしてください。

<靴のチェックポイント>

  1. つま先が上がっている
  2. つま先に余裕がある
  3. 足指が入る部分に十分な高さがある
  4. 甲が締まる(ひも靴・ベルト)
  5. かかとの形が合っている
  6. かかとに芯が入っている
  7. 靴底にクッション性があり、すべりにくい
  8. 母指球の位置が合っている
チェックポイント

また、安定した歩行のためにも、足が靴の中で動かないよう、甲の部分をしっかり留められるひも靴がおすすめです。履く時はかかとを立ててトントンと地面をたたき、足をかかと側に寄せ、つま先側からしっかりとひもを締めてください。履いているうちにひもは緩んでくるので、面倒でも毎回必ず縛り直して着用するようにしましょう。

靴を選びかねるときは、信頼できるシューフィッター(靴選びの専門家)のいる靴屋で相談してみてください。

ちなみに、足に水虫のある人が靴を長時間履いたり、同じ靴ばかり履いていると爪水虫になりやすくなるので、注意が必要です。

まとめ

快適なウォーキングを楽しむためにも「もしかしたら爪水虫…」と思う方は、早めに医療機関を受診しましょう。

監修

  • 高山 かおるさん

    高山 かおる

    埼玉県済生会川口総合病院皮膚科主任部長

    日本フットケア・足病医学会理事。2015年、体の土台である足の問題を根本から解決するために「足育研究会」を立ち上げ、フットケアの重要性について日々啓発活動を行っている。

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