健康のために歩かなければ……と思っていても、つい車やエレベーターに乗ってしまうこと、ありますよね。歩くのが嫌と感じるのは、体が疲れるからですが、歩き方をひと工夫するだけで余計な力が抜けて、歩くのが楽しくなります。
歩くのが楽しくなり、どんどん歩けるように!
現代人は、無意識に体をひねるなどして、ムリな力がかかる歩き方をしています。だから少し歩いただけでも疲れてしまい、「すぐ疲れるのは歳のせい」などと思い込んでしまうことがあります。そんな時におすすめなのが江戸時代までの日本人がみな行っていた「ナンバ歩き」です。「ナンバ歩き」は、体をひねらず、余計な力が入らないため、歩いても体がラクラク。どんどん歩けるようになります。
昔の人は着物が着くずれしないよう、体をムダに動かさず効率的に歩ける「ナンバ歩き」を自然と身につけていました。当時の道は今よりも険しかったはずですが、旅をする時はこの歩き方で1日40kmも歩いていたというから驚きです。
では、やり方を詳しくご紹介します。
階段で行う「ナンバ歩き」のやり方
1 右脚を上げて階段を上ると同時に、右肩を上げます。この時、右の上半身で右の下半身を引き上げるイメージで行います。腕は前後にふらず、肩にぶら下げておくだけにしましょう。
2 左脚を上げて階段を上ると同時に、左肩を上げます。この時、左の上半身で左の下半身を引き上げるイメージで行います。これを交互にくり返して上ると疲れにくくなります。
これらの動作の時、腕を前後にふらず、かかと着地や大股歩きもしません。胸と骨盤の骨を同じ方向に連動させて歩くので、体をひねることなく余計な力がかかりません。
桐朋学園大学教授の矢野さんによると、“ナンバ”とは、「難場」、つまり「山道などの難しい場所も乗り切れる」という意味だそう。
「ナンバ歩き」のひねらない体の使い方は、スポーツ界で浸透しています。例えばマラソンの高橋尚子さんは、常に上半身が正面を向いてブレない「忍者走法」で有名です。世界陸上で銅メダルを獲得した経験をもつ末続慎吾さんが「“ナンバ”を意識しました」と発言したこともあります。
アスリートでなくとも、山登りなど急な斜面や岩場を上る時、自然と同じ側の手足を出す格好になるもの。人間はどうしたら最も効率よくラクに「難場」を越えられるかを、本能的に知っているのです。
階段や坂道を登る時、ぜひ実践してみてください。
監修
矢野龍彦さん
桐朋学園大学教授・トレーニングコーチ/ナンバ歩きの普及に努め、一般向けの教室も開催している
制作協力
からだにいいこと
創刊19周年を迎えた健康生活情報誌『からだにいいこと』。医師や専門家の監修のもと、「いますぐできる」「心も体も元気になれる」健康・美容・ダイエット情報を発信中。