65歳以上の5000人を対象とした実験でわかったのが、歩き方とうつ病の関係性です。うつ病を予防する歩き方をご紹介します。
日光を浴びたり、体温アップがポイント
運動が体にいいだけでなく、心の健康にも役立つことは広く知られるようになりました。
これを明らかにした研究のひとつが「中之条(なかのじょう)研究」という、身体活動と病気予防に関する実証実験です。
群馬県の中之条町で65歳以上の住民5000人を対象に、2000年から20年以上にわたって行われたこの研究では、歩行とうつ病の関係性がわかったのです。
中之条研究の調査対象には、うつ病と診断された人が4.3%いました。その身体活動計グラフには、2つの明らかな特徴がありました。
1つは1日4000歩未満しか歩いていないこと。もう1つは「中強度」の運動を、ほぼまったくしていないということです。
そしてこの研究から、うつ病予防に効果的な身体活動として「1日4000歩、そのうち速歩きを5分」という歩き方が導き出されたのです。
うつ病予防への効果があるのは、2つの理由が考えられます。
1つは「太陽の力」。人は、日光を浴びることで体内のリズムを整えています。外を歩かず室内で過ごすことが多いと、体内リズムが乱れやすくなります。
もうひとつは、中強度の運動により体温が上がり、快眠を得られやすくなること。不眠はうつの症状悪化につながります。
外出の機会が少ない人、落ち込みやすさを感じている人は要注意です。
すぐに「4000歩・速歩き5分」以上の歩行を習慣にして、心身の健康を整えていきましょう。
4000歩は、家の中の活動量も含むので、万歩計などを使い、1日の歩行量を測ってみてください。
なお速歩きは、歩きながら息が上がってきたとき「なんとか会話できる程度」のペースが目安です。
また、さらに様々な病気を防ぐには「8000歩・速歩き20分」が必要になります。
こうして歩く習慣を身に着けることは、車依存から脱却して、環境にも良い影響を与えます。
ぜひ今日から「4000歩・速歩き5分」を日課にし、元気になったら、さらに運動量を増やしていきましょう。
監修
青栁幸利先生
東京都健康長寿医療センター研究所運動科学研究室長
制作協力
からだにいいこと
創刊20周年を迎えた健康生活情報誌『からだにいいこと』。医師や専門家の監修のもと、「いますぐできる」「心も体も元気になれる」健康・美容・ダイエット情報を発信中。
【出典・参考文献】
・『図解でわかる! やってはいけないウォーキング』(SBクリエイティブ)
・「健康長寿を実現する至適身体活動パターンの解明:加速度計を用いた10年間の縦断研究」/地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター
・「Aoyagi & Shephard (2021)_Encyclopedia of Quality of Life and Well-Being Research」