歩くことで筋肉を使うと、脳の血流が促進され、認知症の予防につながります。また、心疾患や脳卒中も、日頃の活動量が影響します。こうした病気を防ぐ歩き方がわかりました。
認知症の発症率に明らかな差が
認知症を防ぐには「1日5000歩の歩行・そのうち速歩きを7.5分」という研究結果があります。
これは群馬県の中之条町で、65歳以上の住民5000人を対象に、20年以上かけて行われた「中之条(なかのじょう)研究」によるもの。身体活動と病気予防に関する、世界的にも有名な実証実験です。
脳血管性の認知症やアルツハイマー病は、運動不足と大きく関連していると考えられています。
歩くことで筋肉を使うと、脳の血流が促進されやすくなります。また、足の抹消からの刺激が神経を介して脳に伝わり、脳細胞を活性化しやすくなるのです。
逆に歩かなくなると、脳細胞が衰えていくことに。
中之条研究では1日の歩行が「5000歩・速歩き7.5分」以上の身体活動を行っている人と、それ未満の人では、認知症の発症率に明らかな差があるとわかりました。
さらに、日本人の死因第2位の心疾患(狭心症、心筋梗塞)や、同第4位の脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)も、「5000歩・速歩き7.5分」以上の人と、それ未満の発症率では明らかな違いがあったのです。
心疾患や脳卒中の背景には、動脈硬化や高血圧症、糖尿病などがあります。
こうした症状には、食事バランスの改善と共に、もっと体を動かすことが必要です。
その最低ラインの目安が「5000歩・速歩き7.5分」という歩き方なのです。
なお5000歩は、家の中の活動量も含むので、万歩計などを使い、1日の歩行量を測ってみてください。
そして、速歩きとは、歩きながら息が上がってきたとき「なんとか会話できる程度」のペースが目安です。買い物に行くついでなどに、速歩きの時間を取りましょう。
また、さらに様々な病気を防ぐには「8000歩・速歩き20分」が必要になります。
まずは「5000歩・速歩き7.5分」をクリアして、徐々に運動量を増やしていきましょう。
歩く習慣が身に着くと、車に乗る機会を減らすことができて、CO2の排出削減など、環境にも良い効果が。
あなたの体を守る歩行習慣をぜひ取り入れてください。
監修
青栁幸利先生
東京都健康長寿医療センター研究所運動科学研究室長
制作協力
からだにいいこと
創刊20周年を迎えた健康生活情報誌『からだにいいこと』。医師や専門家の監修のもと、「いますぐできる」「心も体も元気になれる」健康・美容・ダイエット情報を発信中。
【出典・参考文献】
・『図解でわかる! やってはいけないウォーキング』(SBクリエイティブ)
・「健康長寿を実現する至適身体活動パターンの解明:加速度計を用いた10年間の縦断研究」/地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター
・「Aoyagi & Shephard (2021)_Encyclopedia of Quality of Life and Well-Being Research」