健康を保つための運動は、どのくらい行えばいいのでしょうか。世界的に有名な日本の研究でわかった「がん・動脈硬化・骨粗しょう症」を予防する歩き方とは。
「速歩き」で病気予防に効果が
「がん・動脈硬化・骨粗しょう症」は、いずれも身近な病気です。これらの対策に有効なのが運動です。
まず「がん」において、適度な運動は、活性酸素に攻撃されて傷ついた細胞や遺伝子を修復する働きを高めるとされます。
また「動脈硬化」は、中強度の活動によってLDL(悪玉コレステロール)が減り、HDL(善玉コレステロール)が増えて、進行を遅らせる効果があります。
「骨粗しょう症」は、骨密度の低下が原因となりますが、運動により骨に刺激を与えることで、骨密度の低下の予防につながります。
これらの病気を防ぐには「1日7000歩、そのうち速歩きを15分」という歩き方を行うことが最低ラインになる、と明らかにしたのは「中之条(なかのじょう)研究」というもの。
群馬県の中之条町で、65歳以上の住民5000人を対象に、2000年から20年以上にわたって行われたこの研究は、世界中から「中之条の奇跡」と称賛を浴びています。
この研究によると1日「7000歩・速歩き15分」以上の身体活動を続けてきた人のがんの発生率は、それ未満の人に比べて格段に低いことがわかりました。
「動脈硬化」も、同じ運動量を境に、発症率に大きな差がありました。
そして「骨粗しょう症」でも「7000歩・速歩き15分」以上の活動をしてきた人の発症率は、男女ともに10分の1未満となっているのです。
外を歩いて日光を浴びることは、カルシウムの吸収を助けるビタミンDの合成にも関わるので、骨の強化に重要です。
「がん・動脈硬化・骨粗しょう症」を予防するには「7000歩・速歩き15分」の歩行を日課にしましょう。
なお、7000歩は、家の中の活動量も含むので、万歩計などを使い、1日の歩行量をはかってみてください。
そして、速歩きとは、歩きながら息が上がってきたとき「なんとか会話できる程度」のペースが目安です。買い物に行くついでなどに、速歩きの時間を取りましょう。
また、中之条研究では、さらに様々な病気を防ぐため「8000歩・速歩き20分」が必要とされています。
「7000歩・速歩き15分」ができるようになったら、もっと運動量を増やしていきましょう。
毎日、歩く時間を増やすことで、車に乗らなくて済むようになり、ガソリンの消費を減らして環境にも良い影響が。
ぜひ今日から「7000歩・速歩き15分」を始めて、がん・動脈硬化・骨粗しょう症を防いでいきましょう。
監修
青栁幸利先生
東京都健康長寿医療センター研究所運動科学研究室長
制作協力
からだにいいこと
創刊20周年を迎えた健康生活情報誌『からだにいいこと』。医師や専門家の監修のもと、「いますぐできる」「心も体も元気になれる」健康・美容・ダイエット情報を発信中。
【出典・参考文献】
・『図解でわかる! やってはいけないウォーキング』(SBクリエイティブ)
・「健康長寿を実現する至適身体活動パターンの解明:加速度計を用いた10年間の縦断研究」/地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター
・「Aoyagi & Shephard (2021)_Encyclopedia of Quality of Life and Well-Being Research」