年齢を重ねるにつれて増えていく、高血圧症や糖尿病。いずれも日々の運動が予防に大きな効果を発揮します。そのポイントが「8000歩・速歩き20分」の歩き方です。
病気になるボーダーラインとは
高血圧症は多くの中高年がかかっていますが、治療を受けていない人も多く「自覚はないが高血圧症」という可能性があります。しかし、高血圧症は放っておくと、動脈硬化を引き起こし、心疾患や脳卒中など、死に至る病気とつながっていくことも。
また糖尿病も、初期は自覚症状がないことが多く放置されがち。これも重症になると合併症による失明や、足の切断などが起こる恐ろしい病気です。
これらの予防となる運動量を明らかにしたのは「中之条(なかのじょう)研究」。
群馬県の中之条町で、65歳以上の住民5000人を対象に、20年以上かけて行われたもので、身体活動と病気予防に関する、世界的にも有名な実証実験です。
この研究では1日「5000~7000歩」歩き、そのうち「速歩き7.5~15分」を実践している人たちもいましたが、その24%、ほぼ4人に1人で高血圧症がみられました。
しかし「1日8000歩、そのうち速歩き20分」以上の人では、ほとんど高血圧症が見られなかったのです。つまり血圧を下げる適度な運動のボーダーラインが「8000歩・速歩き20分」ということです。
同じように糖尿病でも「8000歩・速歩き20分」以上の人では、かかっている人がほとんどいませんでした。
これらの病気を防ぐには「8000歩・速歩き20分」を日課にしましょう。
なお、家の中の歩行量もこの数字に含めてよいので、万歩計などで確認して歩行量を確保してください。
また「速歩き」とは、歩きながら息が上がってきたとき「なんとか会話できる程度」のペースが目安です。いつも通る道で「ここからここまでは速歩きで5分」などと覚えておき、速歩きを達成していきましょう。
さらに糖尿病の人は、できれば「食後1時間」にウォーキングをスタートさせるのがおすすめ。このタイミングで血糖値がピークに達するので、運動により血糖値を下げやすくするのが目的です。
このように病気を防ぐために歩行量を増やすことは、車への依存を減らし、環境にも良い変化をもたらします。
「8000歩・速歩き20分」を日々続けて、体も地球も健康にしていきましょう。
監修
青栁幸利先生
東京都健康長寿医療センター研究所運動科学研究室長
制作協力
からだにいいこと
創刊20周年を迎えた健康生活情報誌『からだにいいこと』。医師や専門家の監修のもと、「いますぐできる」「心も体も元気になれる」健康・美容・ダイエット情報を発信中。
【出典・参考文献】
・『図解でわかる! やってはいけないウォーキング』(SBクリエイティブ)
・「健康長寿を実現する至適身体活動パターンの解明:加速度計を用いた10年間の縦断研究」/地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター
・「Aoyagi & Shephard (2021)_Encyclopedia of Quality of Life and Well-Being Research」