加齢とともに、転倒事故が起こりやすくなります。転倒を防ぐポイントのひとつが、足を素早く動かせること。足の敏しょう性を鍛えるトレーニングを紹介します。
加齢とともに、転倒事故が起こりやすくなります。転倒を防ぐポイントのひとつが、足を素早く動かせること。足の敏しょう性を鍛えるトレーニングを紹介します。
敏しょう性をつけて転倒事故を防ぐ
「毎日ウォーキングしているので、足には自信がある」という人がいます。確かにウォーキングを毎日続けていれば、足の持久力を維持できます。
でも足の機能としては、持久力があるだけでは十分とはいえません。足を素早く動かすことができる敏しょう性も重要なのです。
これは、筋肉の働きと関係があります。
筋肉は「筋線維」という細胞が束になってできています。この筋線維は、大きく2種類に分けられます。「速筋線維(そっきんせんい)」と「遅筋線維(ちきんせんい)」です。
速筋線維は、収縮スピードが速く、ダッシュやジャンプのように素早い動きをするとき活動します。ただし、すぐに疲労するので長時間働くことはできません。
一方、遅筋線維はスピードでは劣りますが、疲労物質が蓄積されにくいので長時間にわたって活動を続けられます。ウォーキングやジョギングのように長時間、体を動かし続けるとき、遅筋線維が優先的に使われます。
大人になると、毎日の生活の中でダッシュすることなどめったにありません。このため速筋線維は運動不足の状態が続き、どんどん衰えていくのです。
そして、速筋線維の衰えは転倒などの事故を起こす原因になります。
例えば階段を下りているときに足を踏みはずしたとしましょう。このとき足を素早く踏み出して踏ん張ることができないと、転倒事故を起こしてしまいます。
足を素早く動かすことができれば、こういった転倒事故を防ぎやすくなります。
突然起こる事故防止のために、足の敏しょう性を衰えさせない運動を行う習慣を守りましょう。
〈足の敏しょう性を鍛えるトレーニング〉
●全速ウォーキング
速歩よりもさらに速く歩きます。走り出すひとつ前の速さで歩くのです。
まずは、5メートルを全速力で歩きましょう。
慣れてきたら距離を伸ばしていきますが、せいぜい20〜30メートルにします。距離を長くしすぎると、速筋線維が疲れて働かなくなってくるからです。
横断歩道を渡るとき、安全を確認できたら、青信号のうちに渡りきれるように全速で歩くのもよいでしょう。
足の敏しょう性が鍛えられれば転倒の心配も減り、歩く楽しさを感じられるようになります。日常活動も車生活から歩く生活へと変わっていきます。車の排気ガスに含まれるCO2や有害物質が減少するため、環境に悪影響を及ぼす大気汚染を防ぐことにもつながります。
「全速ウォーキング」を習慣にして、動ける足を保っていきましょう。
監修
湯浅景元先生
中京大学名誉教授
制作協力
からだにいいこと
創刊20周年を迎えた健康生活情報誌『からだにいいこと』。医師や専門家の監修のもと、「いますぐできる」「心も体も元気になれる」健康・美容・ダイエット情報を発信中。
【出典・参考文献】
『病気をよせつけない足をつくる』(草思社)